2009 全日本選手権

TK FINAL RIDE

2009 JCF 全日本MTB選手権大会

場所:長野県富士見パノラマリゾートMTBクロスカントリーコース
WEB:http://wakitasoft.com/Timing/Results/2009/20090720/Result03.pdf
開催日:2009/07/20
天候:晴れ


使用機材

  • バイク    SPECIALIZED 2009 S-works Epic Carbon(BG Fitted)
  • ホイール   ROVAL CONTROL SL 2009 
  • サドル    SPECIALIZED BG PHENOM SL 143mm    
  • タイヤ    前: S-Works Captain 2.0 後: S-Works Captain 2.0 前後 1.9気圧
  • アイウエアー SPECIALIZED Helix with ADAPTALITE PHOTOCHROMIC NXT 
  • シューズ   SPECIALIZED BG S-Works MTB Shoes
  • ペダル    crankbrothers eggbeater 2ti+ti shrot spindle
  • HRM    POLAR RS800CX



サプリメント

  • レーススタート30分前  GOLD’S GYM BCAA&アルギニンパウダー
  • レース中エナジー摂取  power gel
  • レース終了直後     GOLD’S GYM グルタミンパウダー                       GOLD’S GYM BCAA&アルギニンパウダー
  • マッサージオイル    Sports Balm  イエロー4+リフレッシュフルード
  • ペダリングサポート   ニューハレ Xテープ



コンディショニング:http://www.joe39.net/


結果:2位

レポート

負けて悔しくない訳はないが、負けて気持ちがよいと思えるのは自分を送り出してくれた、若手選手たちの走りだ。
今年のオフから引退宣言をし、明確にこの日、この時、この瞬間にすべての力を出し切れるように、最高の走りが出来るように、準備を進めてきた。
プロ選手として自分を高め、常にトップを狙い手中に収めるために走るレースはこれで最後だ。
レース前の数日は全く普段と変わらないように、準備を進めてきて、特にこれといって緊張する訳でもなく、ただいつもと同じように、やるべき事をしっかりとやり、決戦の日を待っていた。
その当日、あまりにも、あまりにも、応援に、観戦に来てくれた多くの方々に、事の大きさを再認識して、かなりの緊張に見舞われた。そうだ、引退レースは初体験だ。初めては誰でも緊張する、失敗は許されない。が、それは自分が望んだ事だ。
昨年引退の意志を固めた後、元旦のブログで、この全日本選手権大会を最後にプロ選手としてのレース活動を終了させることを宣言した。明確なゴールを設定したうえで、そこに適切な手順でアプローチしていく事、自分のスタイルを最後にきっちりと行う事。そして、
自分の引退、最後のレース、という打ち上げ花火を用意する事で、レースという祭りが多くの人によって盛り上がる事。この2つがプロレーサーとしての最後の仕事と課していたのだ。
事前にテレビや雑誌など媒体の取材を受けていたり、多くの方から「720富士見にいきます!」との励ましの言葉をもらっていて、当日の状況は、成功の図式は予想していた。
それが、実際は、予想以上に多くの人が来てくれた。自分と何かしらの接点があったであろう方、東北、九州、自分が訪れた遠方からも。純粋にMTBレースを観たい、という明確な意志を持って、レース会場に足を運んでもらえたという事実。こんなに嬉しい事はない。
だから、緊張した。自分の考え以上に多くの人に想いが届いていたのだから、自分もそれに応えるべく、皆が思う以上の走りをしなければ、と。
スポンサーもそれに応えてくれて、応援グッズを今日のために用意してくれた。
そしてレーススタッフも、いつも、いつも、最高の準備をして、スタートに送り出してくれるが、今日はいつも以上に想いを込めて準備をしてくれた。
万感の想いを込めてレースが始まる。

大応援団

そう、今日は自分の大応援団が会場を占拠していると言ってもいい状況だった。コールは4番、スタートラインに立つ。2005年からメカニックをつとめてくれたエディーさんと最後の握手をガッチリと交わす。ここまで自分がやって来れた、縁の下の力持ちだ。2001〜2004年はパワースポーツシックの高橋清文さんがメカニックだった。ともに、自分の調子の良いときも、悪いときも、そして、些細なリクエストにも全能力を使って応えてくれた。
バイクは常に最良の状態でスタートを出来る喜び、任せられる信頼感、そして、お互いに全力でやる、というプレッシャーをかけつつ、それをクリアしてきたなーなーではない気持ちのよい関係だ。

競争相手

隣には、優勝候補筆頭の山本幸平、そして後方ラインには同じく対抗の辻浦圭一、彼らに加えて、可能性があるのは小野寺健、この4人でのレースになるだろうと予想していた。
幸平の今年のフランスでのレース結果、ワールドカップとフランスカップの世界チャンピオンとのタイム差は昨年とは明らかに縮まってきている。その差では自分は走れないだろうタイムだった。辻浦、小野寺は国内レースで数回一緒に走っている。そこから、読めたのは幸平が最初からいく中で小野寺がそれに追従すだろうし、辻浦は中盤、後半に向けてうまくペースを刻むだろうと。そこに追従できれば、勝機もあるいは。男には負けると分かっていても戦わなければならない、といった面持ちか。
果たしてその通り、レースは幸平のスタートダッシュから始まった。いいスピードだった。小野寺もそれに追従していく。さすがに二人とも海外レースを主体として過ごしているだけある。キレがいい。自分は、悪くはないが若干遅れて6位でシングルへ。先頭から3人は明らかに速く、前の選手と間が空く。自分も乗れていた。遅いと感じる。
アスファルトで前に出て、幸平、小野寺、辻浦に追いつく。そこからのシングルののぼり、幸平の実力が徐々に明らかになる。3人とも良いペースで走っているはずが、ジリジリと離されていく。ペースが速い、それは海外の選手と走っている感覚にも似ている。スーッと伸びていく速さではなく、周りの選手を蹴散らしてでも前に出て行かないといけない、ガツガツとした速さ、だ。いくつもの壁を乗り越えていく、キツさ、限界、いいわけ、そういった壁を打ち破っていくように、頭が、身体が制御不能と感じるまで追い込む。

白く光る世界

2位に上がり、離れいく幸平を追いかける自分も追い込めていた。集中できていた。しかし、そのペースは自分の集中を枯渇させるに十分なものだった。集中からそれは次第に、追い込みの白さから、クラクラとした目眩に変わりはじめる、イケる、から、ヤバい、へと。優勝を目指す最後のレースはここで終わった。追い込んだ果ての白く光る世界の住人ではなくなったのだ。
折しも、照りつける日差し、高まる気温、そして目眩、昨年の全日本選手権大会のごとくノックダウンか、と思うも、最後のレースをそれで終わるわけにはいかない。引退レースだから、勝負に勝てないから、ペース落とし、流して走っても誰も責めるものでもない、楽になっちゃえよ、との声が沸き上がる。よくやったよ、と自分で思えるのか?これからずっと後悔しない終わりなのか?自分で甘えを打ち消す。自分の走りを見に来てくれた大応援団にしっかりと応えなければ。

今出来る最高の事をやる

自分は常に、今やるべき、最適で最良な、最高の事を、ベストを尽くす事を信条としてやってきた。今こそ、それをやるべきだ。残り3周、まずは目眩からラフになるハンドリングを正常に戻すべく、意識、呼吸、動きをコントロールする。のぼりは試走で決めたシフトスケジュールをこなすため、ペダリングに集中して、トクルをかけ、スムーズにフォロースルーをこころがける。自分の走り、動きに集中、進むバイクに、スピードに乗る感覚、いつも大事にしている要素を忠実にこなし続ける。のぼりは確かにキツい、しかし自分で気持ちは折らないこと、自分を駄目にするのは自分だ。自分を良くしてくれるのは周りの力、応援だ。今日の応援は最高だ。最高の走りをキープするのだ。

継ぎゆくもの

レースは、遅れたかに見えた辻浦が、追いついてきて追い越していく局面があった。意地を感じた。
小野寺も攻めた。身体が軋もうが、痛みを覚えようが、身体で力一杯ペダルにぶつけた。ただラフな走りが機材トラブルを招き寄せた。
二人とも言い訳を用意しない走りだった、表彰されたい訳ではない、勝ちたかった、それしかない走りだった。この日、確かに勝負をしていた。
幸平は、前だけを見て走った。世界との差を見据えて、それを縮めるために。周りを見る事なく、周りに合わせる事なく。自分の目指した事、やりたかった事。幸平がやってくれる。
ああ、開きゆく差を確認すると、肩が軽くなるのを感じた。あとは、自分のために走ろう、ただ自分の走りをしよう。

ゴール

一人になり、みんなの待つゴールへ、バイクを走らせる。前との差、後ろとの差、ともに埋まらない。しかし、自分の精一杯の走りで最後のゴールへ。SPECIALIZEDのアイデンティティである赤に染まったゴールへとバイクが滑り込む。
終わった。
自分のために集まってくれた多くのスペクテーターの見守る中、自分自身出来る事は全て出し尽くした。自分も、勝者も、競った相手も、スペクテーターも、スタッフも、全てが、レースに関わる全てがパーフェクトだった。最高のレースがみんなの力で実現した。これがやりたかった。
悔いはない。

“次”へ —

さあ、“次”をまたみんなで始めていこう。